AIで作ったアプリを本番公開するまでの流れ

AIで作ったアプリをPoCから本番へ進める前に、確認順序・合格の証拠・公開延期条件・最低限の成果物を整理します。

結論:動くデモをそのまま公開せず、①環境、②認証・権限、③データと秘密情報、④復旧と監視、⑤担当者と公開判定の順に確認します。各段階で「何を試し、何を証拠として残すか」を決め、未確認や未解決の重要リスクがあれば公開を延期します。

このページは、本番化の可否を自分たちで判断するための入口です。項目別の確認方法は公開前セキュリティチェックリストへ分けています。ほかのテーマも確認したい場合はガイド一覧から選べます。

PoCと本番の差を先にそろえる

PoCは仮説や使い勝手を確かめる段階です。本番は、利用者・データ・権限・障害対応を含めて、決めた運用を繰り返せる状態を目指します。画面が動くことやAIを使ったことだけでは、本番公開の判断材料になりません。

  • PoC:試す目的、仮のデータ、限られた利用者、手作業の復旧でも検証できる。
  • 本番:本番用の環境とデータを分け、誰が何をできるか、異常時に誰が戻すかを説明できる。
  • 切り替えの基準:機能の成功だけでなく、失敗時の挙動と運用担当が証拠で確認できる。

公開前に確認する順序と合格の証拠

上から順に進めると、後の確認をやり直す範囲を抑えられます。「合格」は安全性の保証ではなく、定めた確認を実施し、結果と残課題を第三者が追える状態です。

  1. 環境を分ける本番のDB、ドメイン、秘密情報、外部サービスの接続先を開発用と区別します。合格の証拠は、値そのものを載せない環境・変数・権限の一覧と切り替え手順です。
  2. 利用者と権限を試す未ログイン、一般利用者、管理者などの役割ごとに閲覧・変更・削除を試します。合格の証拠は、許可と拒否の期待結果、実際のレスポンス、対象データを記録したテスト表です。
  3. データと秘密情報を確認する入力値、個人情報、APIキーがログ・エラー・分析イベントへ出ないこと、バックアップの保管先と保持方針を確認します。合格の証拠は、マスキング方針、秘密の参照先、データ取扱いの確認記録です。
  4. 復旧と監視を試すバックアップから検証環境へ復元し、エラー通知とアクセスログをテストします。合格の証拠は、復元結果、所要時間、通知先、確認担当を含む復旧手順です。
  5. 担当者と公開判定を決める公開・停止・復旧の判断者、連絡先、未解決リスクの担当と期限を決めます。合格の証拠は、公開判定メモと、作成者以外でも手順を追えるREADMEです。

一つでも該当したら公開を延期する条件

期限を決めた未対応と、内容が分からない「不明」は同じ扱いにしません。判断できない重要項目は、確認できるまで公開日を固定しないのが実務上の停止条件です。

  • 本番と開発の接続先や秘密情報の境界を説明できない。
  • 権限の拒否テスト、個人情報の扱い、ログのマスキングを確認できない。
  • バックアップはあるが、復元結果や復旧担当を確認できない。
  • 重大な未解決リスクに担当者・期限・影響範囲がない。
  • 契約・審査・高い安全要件があり、必要な正式診断や第三者確認が終わっていない。

条件別の公開判断表

確認結果に応じた次の行動
確認できた状態判断次の行動
証拠がそろい、重要な未解決項目がない 公開候補 判定メモを承認し、切り替え手順を確認する
軽微な残課題に担当・期限・影響範囲がある 条件付きで検討 期限と再確認日を記録し、責任者が判断する
重要項目が不明、または拒否・復元を試せない 延期 不足する証拠を作り、再テストしてから判定する
契約・審査で第三者の診断が必要 要件確認まで延期 チェックと診断の違いを確認し、対象範囲を相談する

最低限そろえる成果物

形式はスプレッドシートやREADMEでも構いません。大切なのは、別の担当者が同じ確認をたどれ、判定時点の事実と残課題が分かることです。

  • 環境・接続先一覧:本番と開発の違い、変数名、秘密の保管場所、変更手順。
  • 権限テスト表:役割、操作、対象、期待結果、実測結果、実施日、担当者。
  • データとログの方針:保存する項目、マスキング、閲覧権限、削除・保持の手順。
  • 復旧手順:バックアップの場所、復元の順番、テスト結果、連絡先、判断者。
  • 公開判定メモ:確認済み、未確認、残課題、期限、担当、公開・延期の決定。

具体的な失敗例から逆算する

  • デモ用のキーで公開する:本番環境に開発用の接続先やキーが残り、停止後にどこを差し替えるか分からない。公開前に値を記録せず、参照先と切り替え手順を確認します。
  • 画面だけで権限を判定する:ボタンを隠しただけでAPI側の拒否を試していない。役割ごとに直接リクエストを送り、許可・拒否の結果を残します。
  • バックアップ取得を復旧と呼ぶ:ファイルが存在することだけ確認し、復元後に動くか試していない。検証環境で復元し、所要時間と手順を記録します。
  • 作成者しか対応できない:障害時の連絡先やデプロイ方法がチャットに散らばり、担当者不在時に止まる。READMEを作り、別の人が手順を追えるか確認します。

詳細確認と相談の入口

このページで「不明」になった項目は、担当ページで確認方法を深掘りできます。AIを使ったこと自体を脆弱性と断定せず、実装と運用で確認できる事実に分けて進めます。